前立腺がん検診は受けたほうがいい?PSA検査のメリットとデメリット

目次

結論:前立腺がん検診は、全員におすすめできる検査ではありません

前立腺がん検診では、主にPSA検査という血液検査を行います。

PSAは、男性の膀胱(尿をためる臓器)のすぐ下にある「前立腺」という臓器でつくられる物質です。前立腺がんがあるとPSAが高くなることがありますが、がん以外でもPSAは上昇します。

PSA検査には、前立腺がんを早く見つけられる可能性がある一方、がんではない人が精密検査を受けることになったり、治療しなくても問題にならなかったがんまで見つかったりするデメリットがあります。

日本プライマリ・ケア連合学会(JPCA)や米国予防医学専門委員会(USPSTF)はこうした不利益を重視し、前立腺がん検診を一律に受けることは勧めていません。USPSTFでは55~69歳は、メリットとデメリットを理解したうえで本人が受けるかどうかを決めることとし、70歳以上では定期的な検診を勧めていません。

そのため、「50歳になったから受ける」のではなく、検査を受ける意味が自分にあるかを考えることが大切です。

まず、どう考えればいい?

特に症状がない場合、50歳になったからといってPSA検査を受けなければならないわけではありません。

受けるか迷ったら、

  • 前立腺がんを早く見つけることを重視したいか
  • PSAが高かった場合、追加の検査を受けてもよいか
  • がんが見つかった場合、治療による副作用も含めて対応したいか

を考えてみましょう。

父親や兄弟など近い家族に前立腺がんになった人がいる場合は、発症する可能性が一般の男性より高いため、検診について医師に相談してもよいでしょう。

PSA検査で何が分かる?

PSA検査は採血だけで受けられます。

ただし、PSAが高いだけでは前立腺がんとは診断できません。

たとえば、年齢とともに前立腺が大きくなる「前立腺肥大症」でもPSAは高くなることがあります。前立腺肥大症は、尿が出にくい、尿が近いなどの症状を起こす病気です。また、前立腺に炎症が起こる「前立腺炎」でもPSAは上昇します。

PSAが高かった場合は、再検査や画像検査などを行い、必要に応じて前立腺の組織を一部採取して、がん細胞がないか調べる検査を行います。

つまり、PSA検査を受けると、結果によってはその後の検査につながることを理解しておく必要があります。

PSAがいくつなら精密検査?

国立がん研究センターでは、年齢を考慮したPSAの目安として次の値を紹介しています。

年齢PSAの目安
50~64歳3.0ng/mL以下
65~69歳3.5ng/mL以下
70歳以上4.0ng/mL以下

ただし、これは前立腺がんの診断基準ではありません。

基準を超えていても前立腺がんとは限らず、基準以下でも前立腺がんが見つかることがあります。PSAの数値だけで判断せず、検査を受けた医療機関で結果について相談しましょう。

検診にはデメリットもあります

前立腺がんには、比較的ゆっくり進行するものがあります。

そのため、検診を受けなければ生涯問題にならなかった可能性のあるがんまで見つかることがあります。これを**「過剰診断」**といいます。

がんが見つかると、手術や放射線による治療などを検討しますが、尿が漏れる、性機能が低下するなどの副作用が起こることがあります。

また、PSAが高いことで、前立腺の組織を採取する精密検査が必要になる場合もあります。この検査には痛み、出血、感染などのリスクがあります。

一方で、検診によって前立腺がんによる死亡を減らせる可能性もあります。USPSTFでは、55~69歳では死亡を少し減らせる可能性があるものの、その利益は小さいと評価しています。

つまり、「早く見つけるメリット」と「検査や治療によるデメリット」の両方を考える必要があります。

50歳以上なら受けるべき?

一律に「受けるべき」とは言えません。

日本泌尿器科学会は50歳以上の男性にPSA検査を行うことを弱く推奨していますが、メリットとデメリットを説明したうえで、本人の希望に沿って行うという考え方です。

一方、JPCAやUSPSTFは検診によるメリットが小さいことを重視しています。

そのため、症状のない人にPSA検査を積極的におすすめする必要はないと考えられます。

「前立腺がんをできるだけ早く見つけたい」という希望がある場合は、メリットとデメリットを理解したうえで検査を検討するとよいでしょう。

こんな場合は医療機関に相談しましょう

次のような場合は、検診とは別に医療機関で相談してください。

  • 尿が出にくくなった
  • 尿が近くなった
  • 血尿が出た
  • PSA検査で高い値が出た
  • 父親や兄弟に前立腺がんになった人がいる

受診先は泌尿器科が基本です。

ただし、これらの症状があっても前立腺がんとは限らず、前立腺肥大症など別の病気が原因の場合もあります。

よくある疑問

PSA検査は毎年受けたほうがいい?

必ずしも毎年受ける必要はありません。

まずはPSA検査そのものを受けるかどうかを考えましょう。検査を続ける場合も、年齢やこれまでのPSA値などによって検査間隔を考えることになります。

PSAが4.0ng/mL以上なら前立腺がん?

いいえ。PSAは前立腺がん以外でも高くなります。反対に、PSAが低くても前立腺がんを完全に否定できるわけではありません。

70歳を過ぎても元気なら検診を受けていい?

USPSTFは70歳以上の定期的なPSA検診を勧めていません。一方、日本では異なる考え方もあります。年齢だけで決めず、健康状態や本人の希望を含めて判断します。

まとめ

PSA検査は、前立腺がんを早く見つけられる可能性がある一方、精密検査や過剰診断、治療による不利益もあります。

そのため、「50歳になったからPSA検査を受ける」のではなく、「検査のメリットとデメリットを知ったうえで、自分にとって受ける意味があるか考える」ことが大切です。

特に症状のない人では、PSA検査を積極的におすすめする必要はありません。受けるか迷った場合は、年齢、家族歴、健康状態などを踏まえて医師に相談しましょう。

参考文献・情報源

  • 日本泌尿器科学会「前立腺癌診療ガイドライン」
  • 日本プライマリ・ケア連合学会「根拠に基づく予防医療推進サイト」
  • 国立がん研究センター がん情報サービス「前立腺がん」
  • U.S. Preventive Services Task Force「Prostate Cancer: Screening」

記事作成日:2026年9月4日
最終更新日:2026年9月4日

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この記事を書いた人

総合診療専門医、家庭医療専門医・指導医

現在は農村地域の中規模病院で幅広い診療に携わり、特に予防医療に関心を持っています。

「からだの羅針盤」は、健診結果・予防接種・がん検診などについて、医学的な根拠をもとに、一般の方にも分かりやすく解説するサイトです。

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