結論:LDL 160mg/dLは高い。でも、それだけで薬を始めるとは限りません
健康診断で「LDLコレステロール160mg/dL」と言われると、「薬を飲んだほうがいいの?」と心配になるかもしれません。
LDLコレステロールは、一般に「悪玉コレステロール」と呼ばれる血液中の脂質です。高い状態が長く続くと動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞などにつながる可能性があります。
日本動脈硬化学会では、**LDLコレステロール140mg/dL以上を「高LDLコレステロール血症」**としています。160mg/dLはこの基準を超えています。
ただし、LDL 160mg/dLだからといって、すぐにコレステロールを下げる薬を始めるという意味ではありません。
まだ心筋梗塞や脳梗塞などを起こしたことがない人では、LDLの数字だけでなく、血圧、糖尿病、喫煙、腎臓の状態、年齢、家族歴などを含めて、将来の病気の起こりやすさを考えることが大切です。
まず何をすればいい?
LDL 160mg/dLだったら、まず健診結果のほかの項目を確認しましょう。
特に、血圧が高い、糖尿病がある、腎臓の機能が低下している、喫煙している、家族に若くして心筋梗塞になった人がいるといった点が重要です。
また、過去の健診結果と比べてみることも大切です。以前から高いのか、最近になって急に高くなったのかで対応が変わることがあります。
そのうえで、食事や運動などの生活習慣を見直します。
LDL 160は、どのくらい高い?
LDL 140mg/dL以上が高LDLコレステロール血症なので、160mg/dLは高い値です。
しかし、
「140以上なら薬」
「160なら必ず薬」
という単純な判断ではありません。
例えば、LDLが160mg/dLでも、血圧が正常で糖尿病がなく、喫煙もしていない人と、高血圧・糖尿病・喫煙が重なっている人では、心筋梗塞や脳梗塞などの起こりやすさは異なります。
つまり、LDLの数字だけではなく、その人全体のリスクを見る必要があります。
「10年間のリスク」も考える
日本動脈硬化学会では、まだ心筋梗塞や脳梗塞などを起こしておらず、一定の高リスク疾患がない人について、年齢、性別、血圧、LDL、HDL、喫煙などから、10年以内に心筋梗塞や脳梗塞などを起こす可能性を評価する方法があります。
おおまかには、
| 10年間の発症リスク | 分類 |
|---|---|
| 2%未満 | 低リスク |
| 2~10%未満 | 中リスク |
| 10%以上 | 高リスク |
と分けて考えます。
これによって、「LDL 160」という一つの数字だけでは分からない、自分の全体的なリスクを評価できます。
ただし、10年間のリスクが低いからといって、「LDLが高くても問題ない」という意味ではありません。特に若い人では、10年間だけで見るとリスクが低く計算されやすいため、長い期間にわたってLDLが高い状態が続くことも考える必要があります。
米国ではどう考える?
米国の2026年のガイドラインでも、LDLの値だけでなく、年齢、血圧、糖尿病、喫煙などを含めて治療を考えます。
米国では日本より心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患が多く、その違いも治療方針に影響しています。そのため、日本よりもLDLが高い状態が長く続くことを重視し、若い人でもLDL 160mg/dL以上なら、将来のリスクを考えて薬による治療を検討することがあります。
ただし、米国でも「LDL 160なら全員が薬」という考え方ではありません。
LDL 160なら、薬を飲むべき?
まだ心筋梗塞や脳梗塞などを起こしていない人では、LDL 160mg/dLという数字だけを理由に、すぐ薬を始める必要があるとは限りません。
コレステロールを下げる薬には、心筋梗塞や脳梗塞などを予防する効果があります。一方で、もともとの病気の起こりやすさによって、薬を飲むことで得られるメリットの大きさは変わります。
高血圧、糖尿病、喫煙、腎臓の病気などが重なっている場合には、薬による予防を検討することがあります。
大切なのは、**「LDLをいくつまで下げるか」だけでなく、「自分の場合、薬を飲むことでどのくらい病気を防げる可能性があるのか」**を考えることです。
まずは生活習慣を見直そう
LDLを下げるためには、まず食事を見直してみましょう。
肉の脂身、バター、生クリーム、脂の多い加工食品などに多い飽和脂肪酸の摂りすぎに注意し、魚、大豆製品、野菜、海藻、きのこなどを取り入れます。
運動や適正体重の維持、禁煙も動脈硬化の予防に役立ちます。
ただし、生活習慣を改善してもLDLが十分に下がらない人もいます。遺伝的な体質など、生活習慣以外の原因もあるためです。
医療機関を受診したほうがいい?
LDL 160mg/dLだけで、急いで受診する必要はありません。
ただし、LDL高値が何度も続いている、高血圧や糖尿病がある、腎臓の機能が低下している、喫煙している、家族に若くして心筋梗塞になった人がいる場合は、内科で相談してみましょう。
LDLが180mg/dL以上と非常に高い場合には、家族性高コレステロール血症という、生まれつきLDLが高くなりやすい体質が隠れていることもあります。
よくある疑問
LDL 160なら、食事だけで下げればいい?
必ずしもそうとは限りません。リスクが低い場合は生活習慣の改善を中心に考えやすいですが、高血圧や糖尿病などがある場合は対応が変わります。
LDLは低ければ低いほどいい?
単純に「低ければ低いほどよい」と考えるのではなく、その人の病気の起こりやすさに応じて、どの程度まで下げる必要があるかを考えることが重要です。
LDL 160なら、サプリメントを飲んだほうがいい?
まずサプリメントを追加するより、食事や運動などの生活習慣を見直し、自分の病気の起こりやすさを確認することが先です。
まとめ
LDLコレステロール160mg/dLは高い値です。
しかし、「LDL 160だから薬」という判断は適切ではありません。
まずは、
① LDL以外の健診結果を確認する
② 過去の健診結果と比べてみる
③ 食事・運動などの生活習慣を見直す
④ 必要なら将来10年間の病気の起こりやすさを評価する
⑤ そのうえで、薬を使うメリットがあるかを考える
という順番で考えてみましょう。
日本ではLDLの値だけでなく、ほかの危険因子を含めた全体的なリスクを評価して治療を考えます。一方、米国では2026年の新しいガイドラインで、LDL 160mg/dL以上の若い人についても、長期的なリスクを考えて早めに薬を検討する考え方が示されています。
LDL 160mg/dLだったからといって、慌てて薬を始める必要はありません。一方で、高血圧や糖尿病などがある場合や、若いうちからLDLが高い状態が続いている場合には、内科で相談してみましょう。
参考文献・情報源
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
- 日本動脈硬化学会「脂質異常症診療のQ&A」
- 日本動脈硬化学会「成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン フォーカスアップデート2025」
- 2026 ACC/AHA/AACVPR/ABC/ACPM/ADA/AGS/APhA/ASPC/NLA/PCNA Guideline on the Management of Dyslipidemia
作成日:2026年9月13日
最終更新日:2026年9月13日


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